量子コンピュータ
読み方:りょうしコンピュータ
別名:量子コンピューター,量子計算機
【英】quantum computer
量子コンピュータとは、量子力学の原理を応用した超並列処理により、超高速処理を可能とするコンピュータのことである。2008年現在は実現しておらず、研究が進められている。
量子とは、物理量に関する最小の単位であり、古典力学では把えられない性質を多数持っている。例えば、精確な観測ができない不確定性原理や、異なる二つの状態を保持できる「量子力学的重ね合わせ」の現象などがある。
現在のコンピュータでは、電子回路のスイッチのオン・オフによって0または1を表し、2進数のデジタルデータとして情報を処理している。データの単位はビットであるが、量子コンピュータとの対比においては「古典ビット」と呼ばれる。なお、量子コンピュータにおいては、情報の最小単位として「量子ビット」(qubit)が用いられる。
古典ビットは、常に0と1のいずれかの値のみ持つことができる。これに対して、量子ビットでは、「量子力学的重ね合わせ」により、1ビットにつき複数の0と1の値を保持することができる。これを利用することで、1ビット当りでの並列処理が実現される。また、処理の際に扱えるビット数を増やせば増やすほど、大量の情報を並列処理することが可能になる。
量子コンピュータは、現在のコンピュータとは比較にならないほど高速な処理を実現するとされる。現状では解読に数千年を費やす必要があるとされる暗号化アルゴリズムも、数分から数時間程度で解読可能になると言われている。
しかしながら、量子コンピュータの実現には多数の課題を抱えており、依然として実現はされていない。例えば、不確定性原理による量子の状態変化を起こさないように量子ビットを集積する技術や環境が必要である。また、実際に演算処理を行わせるためには、現在のコンピュータとは異なる独自のアルゴリズムを適用する必要もある。これらの困難の解決と、量子コンピュータの実現に向けて、世界各国の研究機関によって研究が進められている。
参照リンク
量子工学の世紀へ~超伝導量子コンピュータを目指して~ - (Japan Nanonet Bulletin インタビュー記事)
電子スピン量子コンピュータのメモリー特性 - (NTT先端技術総合研究所 研究成果ライブラリー)
「光半導体素子を用いた量子シミュレータを開発 ― 新タイプの量子コンピュータへ道 ―」 - (国立情報学研究所)
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