スキャン代行サービス
読み方:スキャンだいこうサービス
別名:スキャン代行,スキャニング代行,自炊代行
スキャン代行サービスとは、紙媒体で発行された書籍をスキャナで読み取り、画像などのデジタルデータに変換することで、電子書籍として扱えるようにするサービスのことである。
書籍の裁断やスキャンを自分で行い、独力で電子書籍にすることを通称「自炊」と呼ぶ。スキャン代行サービスは自炊を肩代わりする事業者である。
スキャン代行サービスの多くは、依頼者に対象となる書籍を送付させ、受け取った書籍を裁断・分解して各ページをスキャンし、JPEG画像やPDFファイルなどの形式に変換して、デジタルデータを依頼者に渡す、といったサービスを提供している。OCR(光学文字認識)処理によってテキスト情報を抽出し、透明テキストとして追加することで、本文を検索できるようにするサービスをオプションで提供していることも多い。また、裁断処理のみを代行している場合もある。
書籍を電子書籍にすることで、場所を取らずに保存や持ち歩きできるようになり、紙面の劣化や汚損も気にせず済むようになる。手元の書籍を電子書籍として扱うには、書籍を分解し、1ページずつスキャナーで読み取り、これをページ順に保存していく、といった作業が必要になる。スキャン代行サービスはこうした手間を一手に引き受ける。
電子書籍は2010年頃から広く一般にも浸透しはじめた。2010年は「電子書籍元年」などとも呼ばれた。同年半ばには「自炊」の考え方も広まり、自炊を代行する業者として多くのスキャン代行サービスが登場した。2011年初頭には日本全国で50以上のスキャン代行業者がサービスを提供していた。
著作権の観点からは、スキャン代行サービスの業態を問題視する立場もある。「自炊」は個人の所有物である本の「私的複製」に当たるため、特に問題視されない。しかし代行業者は他人の所有する著作物を事業として複製しており、著作権法に抵触するのではないか、といった見方が主な争点となっている。2011年には複数の作家や漫画家が複数のスキャン代行サービス事業者を相手取り提訴した。同裁判において、一審の東京地裁は原告の訴えを認め、複製事業の停止と損害賠償を事業者に命じた。事業者は控訴した。控訴審の知的財産高等裁判所は、2014年10月に、一審と同じくスキャン代行サービスは著作権侵害であるとの判決を下している。
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