バッファ
別名:バッファー
【英】buffer
バッファとは、コンピュータが即座に処理しきれないデータを一時的に保持しておくための記憶領域を指す意味で用いられる語である。ビジネスシーンでは、「いざという時のための資源的予備・余裕・ゆとり」のような意味で用いられることも多い。
● コンピュータ用語としての「バッファ」の意味
バッファという言葉はIT用語(PCの操作において目に触れる言葉)として比較的よく知られている。
コンピューターにおけるバッファは、日本語では「緩衝域」などとも表現される。これは入出力処理において入力と処理との間に生じるタイミングのずれを補うために用いられる記憶領域である。入力される(データを受け取る)側の機器で処理しきれない分のデータは一旦、バッファに保持される。そしてデータを処理できる状態になってから、バッファに留め置かれたデータが受け取られて処理される。
入力されたデータを逐次処理していくタイプの機構において、処理可能な限度以上のデータを一気に受け取ってしまう場合があると、データを順序どおり正しく処理できなくなる可能性がある。バッファはそのような事態を防ぐための、データの一時的な貯留地のような役割を果たす。
PCをプリンタに接続してデータを印刷する場面は、バッファが活用される典型的な例といえる。PCからプリンタへ印刷データを送信する速度と、プリンタが実際に紙へインクを出力する速度には、明らかな差がある。PCからどんどん送られてくるデータを直に印刷することは難しい。プリンタにはバッファ用のメモリ(記憶装置)が搭載され、そこに印刷データを保持しておく。PCから送られてくる印刷データはバッファメモリに保持しておき、印刷の進行状況に応じてバッファからデータを取り出す。こうすることによって、印刷データの送受信と実際の印刷が齟齬なく円滑に遂行できるようになっている。PC側もプリンタの印刷速度(の遅さ)に影響されることなく処理を完了できる。
動画の再生においては、PCやデコーダーの処理性能(あるいはストリーミング再生におけるダウンロード速度)が満足な水準に達していない場合には、映像として見るに堪えない途切れ途切れのデータ再生となってしまうため、デコーディング済み(あるいはダウンロード済み)の映像データをバッファ領域に貯めてから再生する形が取られる。もっとも、昨今はPCの性能もインターネットの接続環境も十分に高速化しており、動画再生でバッファが機能していると意識させられる場面はそう多くない。
● 工業部品における「バッファ」の意味
IT用語の他にも、「衝撃を和らげる装置・部品・機構」を指す用語としてバッファという呼称が用いられてる。むしろこちらが本義であり、IT用語としてのバッファも広い意味ではこちらの語義に包含される。
代表的な例としては鉄道の接続部分に設けられた機構が挙げられる。鉄道車両におけるバッファは、前後の車両との間に生じ得る衝撃を緩和する役割を持つ。
エレベーターの上下に設置される衝撃緩和装置もバッファと呼ばれる。エレベーターにおけるバッファは、上昇しすぎて天井にぶつかったり、吊り下げ機構の呼称で落下してしまい地面にぶつかったりした場合に、その激突の衝撃を和らげる役目を果たす。
● ビジネス用語としての「バッファ」の意味
ビジネスシーンでもバッファという語がしばしば用いられている。意味はおおよそ「時間や人員の《余裕》」と解釈できる。
たとえば、4時間あれば終わる(と見積もられた)作業があったとして、その作業にきっかり4時間だけ割り当てたとすると、作業の中に難航する部分があったり、途中でやむをえず他の用事を挟んだりした場合に、4時間の予定を超えてしまうことになる。そのような事態が生じることを見越して、あらかじめ設けておく多少の時間の余裕は、バッファと呼ばれることが多い。
あるいは、会議や催し事で配布するための資料などを用意する場合、ぴったり参加予定の人数分だけ用意しておいたのでは、直前になって参加者が増えた場合に配る資料が足りなくなる。資料の一部が汚損した場合にも不都合が生じる。そのような事態が生じることを見越して、あらかじめ設けておく多少の余裕は、バッファと呼ばれることが多い。
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