ユビキタス
【英】ubiquitous
ユビキタスとは、情報化社会において、コンピューティング技術がいつでも・どこにでも存在し、コンピュータの存在をもはや意識することなく利用できる、といった概念のことである。
ユビキタス(ubiquitous)という言葉は、元々は「いたる所にある」、「あまねく存在する」という意味の英語である。1980年代後半に、コンピュータ科学者のマーク・ワイザー(Mark Weiser)によって、「汎用コンピュータ」(メインフレーム)から「パーソナルコンピュータ」の流れに続く、第3のコンピュータの潮流として「日常生活にとけ込んだ目に見えないコンピュータ」を提唱したことに始まるとされる。
ユビキタスは、「コンピュータの存在を意識せずに、その機能を利用できる環境」という意味で用いられる場合が多い。そのような意味合いを、特に「ユビキタスコンピューティング」と表現することも多い。また、ユビキタスコンピューティングを実現するインフラとなる、多種多用な機器間のネットワークは、「ユビキタスネットワーク」と呼ばれ、更に、ユビキタスネットワークの支援によって実現される高度ネットワーク社会を「ユビキタス社会」などと総称する場合もある。
日本では、坂村健が1984年にスタートさせた「TRONプロジェクト」において、同プロジェクトの最終目標に「どこでもコンピューター」というコンセプトが掲げられた。このコンセプトはユビキタスの理想像にほど近く、その後のユビキタスの展開にとっても大きな影響を与えたといわれている。
1990年代後半以降、携帯電話の普及と、携帯電話からのインターネット利用が可能となったことによって、さまざまなサービスをどこからでも享受できる環境が一般的となりつつある。今後、ユビキタスが実現されることによって、もはや情報端末を持ち歩くのではなく、さらに小型化した情報端末が家電製品などに組み込まれるとともに、コンピュータの機能を身にまとうウェアラブルコンピュータの実現や、さまざまな商品や資材に取り付けられて情報を管理できるようになるICタグ(RFID)の普及、インターネットにつながる端末数を大幅に増やすIPv6の定着などにより、人と人がつながり、モノとモノが結ばれる本格的なユビキタス社会が到来すると考えられている。
ユビキタスの実現には、それを支える情報機器の互換性が不可欠となる。WWWの標準化機構であるW3Cによる、ユビキタスに関するワークショップの開設や、各国での標準化団体によるICタグの規格化や標準化の促進などにより、対応が進められている。
なお、総務省は2004年5月に、次世代ICT社会の実現に向けた中期ビジョンであるu-Japan政策を発表しているが、u-Japan政策の「u」には、ユニバーサル(universal)、ユニーク(unique)などと共に、ユビキタス(ubiquitous)の意味が込められている。
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